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出稼ぎ | 眠れない悲しい夜には

♪眠れない 悲しい夜なら 会いに行くよ

 子供の様に優しくなれる時間(とき)を君と過ごせるなら~♪

「眠れない悲しい夜なら」Quatro/parismatch

(JASRAC 知らん(笑))

QUATTRO

最近この曲に嵌っております。相談を受けるのが好きな私は(単なる覗き趣味のスケベおやじとも言うが)、倦怠期の夫婦であれ、彼氏(彼女)のいない、あるいはうまく行っていない女(男)であれ、病気の女の子であれ、子供の教育に悩む母親であれ、最後には「(愛する人に)抱きしめてもらえ(あげろ)」と言うことにしている。これは、まぁ40年を生きてきて、曲がりなりにも「心理学」なるものを極めていびつな形だが学んできた私の結論である。「悩んだ時は抱きしめろ」。単純だ(笑)。ここで、相手のいない男女がどうやってら抱きしめてもらえるのか?と突っ込んではいけない。それは、また別の落し所がある。

これは、子供を持った人なら一度はどこかで聞いたことがあるであろう、Bowlby(ボウルビー)のアタッチメント理論、さらには、Freud(フロイト)の自我構造論を下敷きにしている。僕の大学の学部での卒論のテーマは、まさにこのあたりであった。超端折って解説すれば、(母子の)身体的接触が安心感を生み、それが自我の発達を促すというものだ。だから、逆を返せば、さまざまな不安は、身体的接触の欠如に遠因がある(ただし、全てとは言わないが)と考えている。まぁ、乱暴な議論であるが、研究者ではない、応用世界の人である私は、これで十分だと思っている。少なくとも手っ取り早い、不安解消スキルのひとつ程度と思ってもらって構わない。

ところが、今読み始めている本(まだ、ちろっとしか読んでいないが)に、少々聞き捨てならないことが書いてあった。『フロイト先生のウソ』というその本(文庫なので、初出は古いのかな?)は、アメリカでは精神病理治療の重要な位置を占める精神分析に、治療効果が全くないという研究結果を縷々紹介した本である。確か以前にも、トンデモ本系の本で、「精神分析は心霊手術みたいなもんだ」みたいなことが書かれていたのを読んだことがあるが、この本は、研究論文(ほとんどは、かなり信憑性の高い大規模な疫学調査や、肯定派論文の再検討)を論拠に、さまざまな流派の精神分析を切り捨てている。要するに、プラシーボ効果以上の効果は上げていないらしい。つまりは、治療効果はないということだ。

フロイト先生のウソ (文春文庫)

まいったなぁ。一応科学者の端くれと思っている私には、この結論には謙虚に耳を傾けなければならない。そっかぁ、私の依拠してきた学問は、全くの絵空事だったのか。ちょっと、悲しい気分である。つーことは、「悩んだ時は抱きしめろ」理論も、役立たずってことか・・・・。

でもちょっと待て。たとえ治療効果がなかったとしても、前記の理論の説明妥当性についても全く有効性がないのだろうか。なんとなく、治療効果と、人の心の構造、あるいは成り立ちの妥当性は違うのではないか。

と、ここからが、科学ではない、極めて局地的な、(私の)体験に基づく印象批評的な、つまりはただのヨタ話になるのだが、治療効果はなかったとしても、体験の中での実感とは、やっぱ若干の違和感を感じる。

そこで冒頭の曲のフレーズである。

悲しくて眠れない夜を過ごしたことがない人っているのかなぁ。皆無とは言わないだろうけど、程度の差はあったとしても、ほとんどの人には思い当たるフシがあるのではないだろうか。少なくとも、私の場合は、あるなぁ。その悲しさが、恋愛による時もあるし、会社の借金の時のこともあるが。つーか、私の場合は、後者が多いのか(涙)。まぁ、ダブルの時もあるけど。ま、自分のことはどうでも良い。

この曲は恋愛の歌だろうな。冒頭に続くフレーズは、

♪ワガママも言いたくなるだろう

 叶わぬユメ 心に刺さり

 僕には話せばいい 少し楽になれば♪

状況を読んでみる。二人は離れているところを見ると、多分恋人同士なのだろう。もしかしたら、彼氏は別にいて、彼氏とのいざこざを男友達に相談しているのかもしれない。で、彼女に何かがあって、悲しくて眠れない(その原因らしきものは、サビのフレーズで暗示されるがここでは省略)。で、深夜、男に電話をしたのかな。「悲しくて眠れないの」とでも言ったかな?よくある恋愛の風景だ。

で、問題はここから先「会いにいくよ」である。「僕には話せばいい」と後に言っているので、電話で済みそうなもんだが、済まないらしい。ま、せっかく会いに来たんだから、私なら当然抱きしめますとも(笑)。それはいいとして、で、「少し楽になれば」=癒しがあるわけである、私はこの部分(会いに行くと言うことと、それに伴う癒し)に強く共感するんですね。

ヒトは言葉の生き物であるので、「話せばわかる」はずである。しかし、にも係らず「会いにいくよ」である。つまり言葉だけでは零れ落ちる、ヒトのコミュニケーションにおける重要な側面が暗示されている。これはまさにアタッチメント理論を、自我構造論を証明する事実ではないのか。体験的に、電話では取れなかった不安が、顔を合わせた途端に溶けていく感覚を何度も経験しているし。別に恋愛ではなくても、営業の電話とかで、直接話をすることと、電話で話をする事の違いを痛感することは多い。特に、私の会社は、通信販売をおこなっているので、このことについては人よりも敏感だ。

この曲に限らず、J-POP、フォーク、洋楽、果ては演歌に至るまで、このテのフレーズは溢れている。ということは、こういう局面(言葉ではなく対面する、あるいは抱きしめる局面)は、かなり一般性の高い局面であり、かつそれによってヒトは癒されているということを表している。逆に言えば、会えないことによって、悲しみを持続的に延期、あるいは増幅させているのではないか。

と、するならば、「悩んだ時は抱きしめろ」という、私の単純明快かつ乱暴な処方箋は、あながち的を外しているわけではないような気もするのだ。

愛するヒトに抱きしめてもらうことと、精神分析を受けることとは決定的に違うことがある。精神分析家は、クライアント(患者)を抱きしめることはしない。あくまでも、言語行為によって患者の精神の深層に変容を及ぼそうとする。ここに私は、治療行為としての精神分析の限界を実は感じている。プラシーボ効果以上の治療効果がないということは、精神分析理論の重要な側面である、アタッチメントが治療行為から排除されていることによるのではないか。だからといって、精神分析家も患者を抱きしめろと言っているのではない。

思うに、精神分析とは、治療手技ではなく、むしろ、単なる人間関係を科学的な言葉で解き明かそうとする文学ではないのか。つまり、自分を理解するための、近しい他者を癒すための説明書なのではないだろうか。文学に癒しはあっても、経済行為としての治療はありえない。精神分析の過ちは、「治療行為として」科学的妥当性があると考えたことにあるのではないだろうか。

この意味で、私はまだ、精神分析の有用性を未だ信じている。何よりも、精神世界における、抱きしめの効果は、やはり色褪せることはないと思っている。ただ、恋愛における抱きしめが、更に病状(恋の辛さね)を悪化させることもある。ただ、それはここでの主張とはまた別の話だ。

心身症や鬱病で睡眠薬を処方する時がある。睡眠薬そのものに治療効果はない。ただ良く眠れるだけである。しかし、治療における睡眠薬の効果は、患者の生活を病的に侵しているさまざまな観念から、睡眠によって一時的に患者の身体を切り離し、心から体への「痛み」の侵襲を延期させることである。

抱きしめによって、一時凌ぎにしろ「少し楽になるならば」、それは意味のあることではないか。今、本人を苛んでいる、さまざまな観念が一瞬にしろ消え去るのだから。そういう意味では、僕は、抱きしめだけではなく、向精神薬や酒、はては中枢性サプリメントの効用もこの点で認めている。

遠距離恋愛をいくつかしたことがある。便利な世の中だから、携帯電話でいつでも声を聞くことが出来る。仕事中でも、メールでそっと囁くこともできる。パソコンに付けたカメラで、お互いの顔を見ながら話すことだって可能だ。しかし、やはり遠距離恋愛は苦手である。眠れない悲しい夜に、会いにいけないから。

ま、すごく近くにいても、すごく遠いってこともあるけど。まぁ、それは、また別のお話ということで。

というわけで、抱きしめてもらいましょう。抱きしめてあげましょう。そして、そういう人が身近にいることに感謝しましょう。いないと思っている人も、よくよく周りを見回して見ましょう。

え?私ですか?ええ、ええ、いますとも、10年以上連れ添った、枕ちゃんが。

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